ご家族がおひとりで他界されてしまった物件は「事故物件」に該当してしまう恐れがあります。
事故物件とは「心理的瑕疵」という、購入に抵抗を感じてしまう建物のことです。この瑕疵とは、欠陥や損傷を意味する言葉。そして心理的瑕疵物件は、買主に購入を迷わせてしまう原因が発生している建物を指します。
不本意ながら事故物件に該当すると、相場が下がるうえ、売却トラブルに巻き込まれてしまう恐れも浮上します。
そこで本記事では、孤独死物件をできるだけ高く売却する方法と注意点についてご紹介いたします。
孤独死物件を売却する前に知っておくべきこと
「少子高齢化社会」「核家族化」が進んでいる現代において、孤独死は増加傾向にあります。
東京都監察医務院が公表しているデータによると、65歳以上の孤独死は年々増加しているとのこと。東京23区内だけでも、以下のような状況となっています。
東京都23区内における一人暮らしの者の死亡者数の推移 | |
平成15年 | 1,451人 |
平成22年 | 2,913人 |
平成28年 | 3,179人 |
以上のことから、現代において孤独死は非常に身近な問題であり、今後多くの人が向き合うことになると推測されます。
孤独死は事故物件に該当してしまうのか
今後、多くの人が向き合う孤独死物件の売却は、決して難しい問題ではありません。
冒頭でもご紹介したように、一般的に人が亡くなってしまった物件は「事故物件」に分類され「相場が下がる」「売主リスクが生じる」という問題が発生します。
しかし、これは「亡くなった状況」によって大きく左右され、ご家族の最期の状況によっては、一般的な物件に近い形で売却することも可能です。
まずは、現在の状況が「事故物件」に該当してしまうかどうか、確認していきましょう。
事故物件に該当しない孤独死のケース
まずは、事故物件に該当しない孤独死の内容からご紹介します。
・遺体発見が比較的早かった
・病院に搬送され院内で他界した
事故物件に該当するか否かは、ご遺体の発見の早さ、そして亡くなった理由が深く関わっています。
なぜならば、ご遺体の発見が早ければ建物の損傷や腐敗が少なくて済みますし、事件性が少なければ購入希望者が嫌悪感を抱きにくいからです。
また、自宅で意識を失ったものの病院で息を引き取った場合も、そもそも自宅で亡くなったとは言えないため、事故物件には該当しません。
事故物件に該当する孤独死のケース
一方で、残念ながら事故物件に該当してしまうのは、以下のようなケースです。
・死後発見が遅れた場合
・ニュースやSNSで拡散されてしまった
事故物件に該当してしまうのは、死後遺体の発見が遅れたり、自殺や事故死のような事件性が絡むケースです。このような場合は、遺体の損傷が激しく、建物に腐敗臭が残ってしまったり体液が床や壁に染みついてしまったりするからです。
また、建物の損傷がなくとも、ニュースやSNSなどでご自宅の孤独死に関することが拡散されてしまった場合も、事故物件に該当してしまうことが多い傾向にあります。
孤独死が事故物件に該当すると起こり得る4つのリスク
もしもご自宅が事故物件に該当した場合、以下のようなリスクが発生する恐れがあります。
・最大で相場が5割程度に下がる
・告知義務が生じる
・買主から損害賠償を請求される恐れも
では、なぜ上記のような問題が発生してしまうのでしょうか。
ここから事故物件に該当すると起こり得る4つのリスクについて解説していきます。
問題点1.購入希望者が中々現れない
第一に懸念すべきことは、購入希望者がなかなか現れなくなるという点です。
通常、事故物件を売却するときは、宣伝の段階で孤独死があったことを説明するのが一般的。
購入希望者の中には「事件性がなければ構わない」と現状を全く気にしない人もいれば、「亡くなった人がいるのは、ちょっと…」と人の死に関わる状況に嫌悪感を抱く人も一定数存在します。
このように、買主に何かしらの嫌悪感や不安を与えてしまう物件のことを「心理的瑕疵物件」と呼びます。心理的瑕疵物件の大きな特徴としては、人によって嫌悪感を抱くレベルが違うという点。
そのため、限りなく自然死に近い形で他界され建物自体に損傷がない場合でも、購入までに至らないケースも出てきてしまうのです。
問題点2.最大で相場が5割程度に下がる
続いての問題点は、事故物件に該当してしまうと、相場が2~5割程度まで値下がりする傾向にあること。一般的に、自然死や孤独死のような事件性がない場合は、相場の2割程度、自殺や殺人の場合は、相場が最大で5割も安くなってしまう恐れがあります。
これは、事故物件であるという事実が、需要を低下させてしまう理由です。買い手が見つからなければ、価格を下げるなどの対策が必須となります。
それと同時に、深く関わってくるのが「心理的瑕疵」です。心理的瑕疵は、買主のイメージによるものが強いため、死亡内容によっては値下げ要求される可能性が高くなります。
問題点3.告知義務が生じる
売主には、告知義務という責任が生じます。
告知とは、買主に現状をありのまま伝えること。そして、告知は売主の義務として定められています。一般的に、告知は死亡内容に限らず平等に行われるのが一般的です。
告知すべき内容に明確なルールはありませんが、一般的に売買契約の前に渡される重要事項説明書に「告知事項あり」と記載されます。その後、買主によって「死亡事故内容」「発生時期」なども聞かれることがあります。
とは言え、告知はあくまで義務であり、違反したからと言って罰則はありません。また、どんな死亡内容であれば告知せずに済むのか、また何年経過したら告知義務はなくなるのか、と言ったような告知ルールが明確化されている訳でもないのです。
しかし、現代ではウェブサイトやSNSで事前に物件情報を検索する買主が増えてきました。調べればすぐに情報を得ることができる現代において、事実を隠して売買契約を結ぶことは、後で売主責任を追及されるリスクが高くなります。
問題点4.買主から損害賠償を請求される恐れも
事故物件であることを「隠して販売」した場合、買主から損害賠償を請求されたり、契約を解除されるケースもあります。
不動産売買のルールを定めている法律では、買主が納得できないような不動産を販売した場合、売主は責任を負わなければいけません。これを契約不適合責任(瑕疵担保責任)と言います。
売主が負う「契約不適合責任」には、以下のようなものがあります。
責任名 | 内容 |
損害賠償 | 買主への賠償 |
契約解除 | 売買契約の解約 |
追完請求 | 修繕費の請求 |
代金減額 | 売却金の値引き請求 |
上記の責任は、告知義務を怠り、買主がその事実を後で知った場合に発生します。買主側としては「知っていたら購入しなかった」「先に言っておいてほしかった」という心理が働き、結果的に「売主に何らかの賠償をしてほしい」という流れになるからです。
孤独死物件のリスクをできるだけ回避する2つの対策
ここまでご説明してきたように、孤独死物件には「需要を低下させてしまう」「売主責任が問われる可能性」というリスクが生じます。このリスクを回避するためには、以下の対策が有効です。
・告知を行う
買主がどんな点に不満を感じるかは、推し量ることはできません。そのため、いつどのような状況になっても売主が責任を問われることがないよう、万全の状態で売買契約に臨みましょう。
対策1.アピールできるポイントを探しておく
少ない需要でも、物件の魅力を最大限にアピールできれば、契約に繋がる可能性が高くなります。
購入希望者に物件の魅力を伝えるために、日ごろからアピールポイントを探しておくことが大切です。「立地条件」「周辺施設」などを中心にアピールするのがおすすめ。
アピールすべき立地条件には、例えば以下のようなものがあります。
・駅やバス停が近い
・都市部へのアクセスが良好
・人気の学区内にある
・周辺に医療施設やショッピングモールがある
・公園や河川敷など自然がある
購入希望者がファミリー層であった場合、治安や静かな環境を求める傾向にあります。また、単身者であればアクセスの良さや周辺施設など、利便性を優先する人が多いでしょう。
上記以外にも「地域の犯罪率」「飲食店が多い」なども、アピールできるポイントです。購入希望者がどのような住環境を求めているのかを探り、それに合った物件の魅力を伝えましょう。
対策2.内容にかかわらず告知は必ず行う
孤独死は事件性が低く、事故物件に該当しにくいケースではありますが、リスク回避のために告知は行った方が無難です。
告知するときは、事実をしっかりと伝えましょう。告知は「嘘を言う」だけでなく「あえて話さなかった場合」も告知義務違反として、売主責任を問われます。
もし、告知すべきかどうかの判断に迷ったときは、不動産会社に事実を話し、判断を委ねてください。取引実績が多い不動産会社では、売主リスクも含め、適切なアドバイスをしてくれます。
孤独死があった物件をスムーズに売却する方法
ご家族が亡くなった事実を隠すことなく、スムーズに売却するためにおすすめなのは、以下の3つの方法です。
以下の方法であれば、例え告知をしたとしても「相場が安くなる」「買主が見つからない」というご不安を軽減させることができるでしょう。
特殊清掃やリフォームしてから販売
孤独死があった物件は、遺体から出た臭いや体液による染みが発生している可能性があります。
一見、建物の見た目にはダメージがないように見えても、遺体特有の臭いがついてしまっていたり陰で虫が湧いてしまったりしているケースも少なくありません。
特殊清掃は見た目を綺麗にするだけでなく、除菌や殺菌処理も可能です。
また、腐食や腐敗が酷いときには、リフォームするのも有効手段のひとつ。リフォームで、亡くなった現場を無くしてしまえば、心理的瑕疵も軽減されます。
ただし、リフォームは特殊清掃より費用がかかるため、死後遺体の発見が遅かったなど、特殊清掃で取り切れない汚れが蓄積してしまったときに、依頼することをおすすめします。
早く処分したいなら買取も検討
買取は、不動産会社に物件を買い取ってもらう販売方法です。
一般的に、買取は「現状のまま」物件を引き渡せるため、特殊清掃費用やリフォーム費用などはかかりません。不動産会社では、物件を買い取った後に、修繕するなり解体するなりして、物件を販売していくからです。
買取は修繕費や解体費が必要ありませんが、その分、市場価格は安くなります。手元に残る売却金は少なくなりますが、一般的な仲介売却よりも短期間で売却手続きを終えることができます。
不動産会社の中には、即日買取を行う業者も。早急に売買契約を終えたいとお悩みの人は、買取も視野に入れておきましょう。
事故物件を取り扱う不動産会社に査定依頼
買取にせよ仲介売却にせよ、事故物件の取り扱いに長けた業者に査定依頼することをおすすめします。
査定とは、売却前に建物がどのくらいの価格で売却できるか見積もりを取ること。また、仲介売却した場合と買取した場合との差額を見積もることも可能です。
査定は、不動産会社が無料で請け負ってくれますが、不動産会社によって見積もり額に差が出る傾向にあります。ここで注意したいのが「高い見積もりを出した業者=信頼できる不動産会社ではない」ということ。
見積もり額を高めに提示し、契約を取りたいだけの業者に注意しなければ、損をしてしまいます。査定依頼する不動産会社が、信頼できるかどうかは、事前のリサーチが必要です。
事故物件の取り扱い実績が多い不動産会社であれば、相場通りの見積もり額を提示してくることが多いため、ウェブサイトやチラシなどを確認し、過去にどれだけ事故物件の取り扱いが多かったのか、チェックしてみましょう。
まとめ
孤独死があった物件は、事故物件に該当するとは限らず売却後のリスクも低い傾向にあります。
とは言え、リスクが完全にないとは言い難いため、事件性のある事故物件同様に「告知を行う」「必要に応じてリフォームや特殊清掃を行う」などの措置は取っておきましょう。
また、ご家族が亡くなられた事実が事故物件に該当するか否かの判断は、不動産会社に任せましょう。事故物件の取り扱いに長けた業者であれば、事故物件に限らず物件の売却に最善を尽くしてくれます。
ご家族の想い出が詰まった家を安心してお任せするために、信頼できる不動産会社を選びましょう。
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