共有不動産を売却か賃貸かで迷ったときに考えたい3つの判断ポイント

共有不動産 売却 賃貸

「使っていない共有不動産を持っているけれど、売却と賃貸のどちらがいいんだろうか」と迷っていませんか。

それぞれメリット・デメリットがありますが、特別な理由がない限りはメリットが多い「売却」がおすすめです。

とはいえ、そもそも共有不動産の取扱いは他の共有者の意見も影響するため、独断で進められません。

そこでこの記事では、共有不動産を「売却する」「賃貸に出す」それぞれのメリット・デメリットを解説しています。その内容を踏まえ、どちらの対応にするか決める際の参考にしてください。

共有不動産を「売却する」「賃貸に出す」の2つで迷ったときの判断ポイント

最初に、共有不動産を「売却する」「賃貸に出す」の2つで迷ったときに、どちらにするか決めるための判断ポイントを紹介します。

  • 1.「売却」と「賃貸」のそれぞれに同意している共有者の持分割合
  • 2.「売却」と「賃貸」で得られる合計収入
  • 3.将来、共有不動産を「自宅」として利用する可能性

上記3つについて確認することで、どちらで進めていくかの方針を決められます。

1.「売却」と「賃貸」のそれぞれに同意している共有者の持分割合

共有不動産では共有者の意思が重要です。

まず、共有不動産を「売却」するためには共有者「全員」の同意が必要です。

そのため、あなたが共有不動産を売却したいと思っていても、売却に反対する共有者が1人でもいれば、その反対している共有者の持分割合に関係なく売却できません。

つまり、売却に反対の共有者がいる場合、その共有者を説得できなければ賃貸以外の活用方法はありません。

ただし、共有不動産を「賃貸に出す」場合にも条件があります。売却より厳しくはありませんが「持分割合の過半数の同意」が必要です。

ここでポイントとなるのは「共有者の過半数」ではなく「持分割合の過半数」ということです。

例えば、持分割合3分の2の共有者がいれば、その共有者1人の意思で賃貸に出すことを決められます。

反対に、共有者が5人いて、4人の共有者が賃貸に出すことを拒否していたとしても、その4人の持分割合が合わせて1/2未満であれば拒否できないことを意味します。

このように共有者の意見が共有不動産の取扱いに影響するため、まずは他の共有者が「売却」と「賃貸」についてどのように考えているかを確認しましょう。

2.「売却」と「賃貸」で得られる合計収入

2つ目のポイントは「売却」と「賃貸」のそれぞれで見込まれる合計収入の差です。

そもそも、共有不動産を売却または賃貸に出そうと考えているということは、現在その物件に住んでいる人はいないのだと思います。

そして、誰も使っていないのであれば、売却するか賃貸に出すかして、その物件を活用しようと思われているのではないでしょうか。

そこで、どちらの方法を採用するか決めるためにも、それぞれの場合の合計収入をシミュレーションして比べます。

売却の場合は、近い条件の物件の売却相場から予測しましょう。国土交通大臣指定の不動産流通機構が運営・管理しているREINSを使えば、自分でも売却相場を調べられます。

REINS Market Information

そのほか、不動産業者に売却査定を依頼することも1つの方法です。

次に、賃貸に出す場合です。

このときには、周辺の条件が近い物件の家賃相場を調べます。家賃相場はSUUMOやホームズのような不動産ポータルサイトで検索すると簡単です。

SUUMO
ホームズ

また、賃貸の場合には家賃収入だけでなく、毎年の固定資産税や都市計画税、賃貸経営にかかる管理費や修繕費などの費用を考慮する必要があります。

そして、これらの方法で調べた「売却」と「賃貸」でそれぞれ得られる合計収入を比べて、どちらのメリットが大きいかを考えましょう。

3.将来、共有不動産を「自宅」として利用する可能性

3つ目が、共有不動産を「自宅」として将来的に利用する可能性があるかどうかです。

売却すれば当然、共有不動産の所有権は買主に移ります。

そのため「買主から買い戻す」という特殊な対応をしない限り、その家に住むことはありません。

賃貸であれば、不動産の所有権は共有者たちにありますので、入居者がいなければその家に住むことが可能です。もちろん入居者がいれば、その人を追い出してまで住むことはできないので注意してください。

もし近いうちに自宅として利用することが決まっているのであれば、定期借家として貸し出すことで、共有不動産を無駄なく活用できるでしょう。

共有不動産の売却・賃貸それぞれのメリット・デメリット

次に共有不動産を売却する場合と、賃貸に出す場合のメリット・デメリットは次の表のとおりです。

次の項目からそれぞれ詳しく解説していきますので、他の共有者を説得する際の参考にしてください。

共有不動産の売却・賃貸のメリットとデメリット
売却 賃貸
メリット ・共有状態を解消できる
・まとまったお金が手に入る
・継続的な収入を得られる
デメリット ・今後、その家に住めなくなる ・管理の手間がかかる

売却するメリット1:共有状態を解消できる

売却すると所有権は買主に移るので、不動産の共有状態を解消できます。

これは、共有不動産を売却する大きなメリットです。

共有不動産をそのまま所有していた場合、今後発生するリフォームや増築、建替えなど、その都度共有者全員の同意を得る手間がかかります。一部の共有者と連絡が取れなかったり、同意に時間がかかって必要な対処を迅速におこなえない可能性があります。

いまはまだ共有者の数が少なく、共有者内での意見をまとめやすいと考えているかもしれません。

しかし、共有者の誰かが亡くなって相続が発生すると、持分は細分化されて権利関係が複雑になり「共有者が誰か、把握するだけで数ヶ月かかる」なんてことにもなりかねません。

共有不動産はトラブルになったとき、その解決が非常に難しいものです。共有者の数が増えれば増えるほど、その難しさは増していきます。

将来のトラブルを避けるためにも、共有不動産の共有状態はできる限り早く解消した方がよいです。

売却は共有状態を解消できる点で、大きなメリットです。

売却するメリット2:まとまったお金が手に入る<

2つ目のメリットは、まとまったお金が手に入ることです。

あなたの持分割合にもよりますが、共有不動産を売却することで数百万円単位の現金を得られます。

それだけの金額があれば、いま自宅で使っている家電を最新のものにしても余裕があるでしょうし、将来の万が一に備えて貯金しておくのもよいでしょう。

そして、利用の有無にかかわらず、不動産を所有しているだけでかかってくる固定資産税や都市計画税、その他維持費などもかからなくなります。

これらの金額は1ヶ月に換算すれば数万円程度、持分割合で分割すれば数千円程度かもしれません。少額に感じますが、その支払いが何年も続くとなると大きな負担となります。

まとまったお金が手に入ることと合わせて、このような支出もなくなることが売却するメリットです。

売却するデメリット:今後、その家に住める可能性がなくなる

共有不動産を売却すれば、共有状態を解消でき、まとまった現金が手に入ります。

そのため、とくにデメリットはありませんが、あえてあげるとすれば「今後、その家に住める可能性がなくなる」ことです。

共有不動産を売却すればその所有権は買主に移るので、その家に住むことはできません。

どうしてもその家に住みたいのであれば、買主からまた不動産を買い戻せば理論的には可能です。

ただ、そのときの所有者が売却を拒否すれば、どれだけお金を用意しようと買い戻せません。そもそも、そこまでして住もうとするなら、売却しない方がよいでしょう。

このように、将来その家に住みたい共有者がいる場合、売却はデメリットがある選択となります。

続いて、賃貸に出すメリット、デメリットを解説します。

賃貸に出すメリット:継続的な収入を得られること

賃貸に出すメリットは、家賃によって継続的な収入を得られることです。入居者がいる限り、ほとんど労力をかけることなく収入が入ります。

また、戸建てであればファミリー向けとなるため、長く住み続けてもらえる傾向にあります。なぜなら、子どもの学区が変わらないように小学校または中学校を卒業するまでは引越しを避ける世帯が多いからです。

そのため、一度入居者が決まれば、その後は安定した家賃収入を得られます。

賃貸に出すデメリット:管理の手間がかかること

共有不動産の賃貸経営は、ほとんど労力がかからないとはいえ、最低限の管理は必要です。

具体的には、家賃の徴収や入居者からのトラブル・苦情処理、賃貸経営にかかる経理処理などです。共有者がいるので、家賃収入と経費を事前に定めた割合で分配する必要もあります。

このような管理業務は管理会社に委託できますが、家賃の変更や礼金の受け取りの有無、金額、原状回復工事の発注先など細かな部分については共有者間で意見を一致させなければなりません。

共有者間での同意が必要な事柄も多く、通常の賃貸経営に比べて管理にかかる手間が大きくなります。

また、共有不動産の賃貸経営では、共有者の1人が家賃収入を独占したり、事前に決めた費用負担を拒否したりといったトラブルに陥りやすい点もデメリットです。

特別な理由がなければメリットが多い「売却」がおすすめ

ここまで「売却」と「賃貸」それぞれのメリット・デメリットを説明してきましたが、比べると「売却」の方がメリットは多く、デメリットらしいデメリットもありません。

そのため、共有不動産を手放せない特別な理由がなければ「売却」と「賃貸」で迷った際には「売却」がおすすめです。

共有状態を解消できるので、今後トラブルが起きることもなく、安心して生活できます。

それでは次に、共有不動産を売却する流れについて説明します。

共有不動産を売却する流れ

共有不動産を売却するときに大切なことは、共有者全員の同意を得ることです。

共有者にはそれぞれ持分があり、持分単体を共有者個人の意思で売却はできますが、不動産全体を売却するには共有者全員が売却に同意している必要があります。

そして、売買契約を結ぶときと所有権移転登記をおこなう残金決済時には原則、共有者全員の同席が必要になる点が一般的な不動産売却と異なる点です。

共有不動産を売却する際には具体的に、次の7つのステップで進めます。

  1. 売却相場を調べる
  2. 共有者全員の同意を得る
  3. 売却に必要な書類を準備する
  4. 不動産会社に売却を依頼する
  5. 質問・内覧対応などする
  6. 売買契約を結ぶ
  7. 残金決済・引渡しをおこなう

まずは共有不動産の売却相場を調べることからはじめましょう。

1.売却相場を調べる

共有不動産の売却について、共有者全員の同意を得るためにも売却相場を把握することは大切です。

もともと全員が不動産を売却するつもりであれば、あえて最初に売却相場を調べる必要はありません。

しかし、売却に迷っていたり反対している共有者がいる場合には売却相場を調べておくことは説得に役立ちます。「これくらいで売却できるから、○○円手元に入る」と具体的な売却プランを提示できるので、その説明を聞いて売却に同意してくれるかもしれません。

売却相場を手軽に調べる方法はインターネットを使うことです。

例えば、REINS Market InformationやSUUMO、ホームズなどの他の不動産売却情報が確認できるホームページを利用して、共有不動産と近い条件の売却価格を調べます。

REINS Market Information
SUUMO
ホームズ

調べる際には、地域や駅からの距離、敷地面積、築年数、間取りなどの条件が近い物件に絞って探しましょう。

そして、自分で売却相場を把握したあとで、不動産会社に売却査定を依頼します。

最初に売却相場を調べる理由は、不動産会社の査定結果の妥当性を判断できるようにするためです。なにも知らなければ、査定価格が高いのか低いのか判断できません。

査定価格が高かったとしても、相場より離れていては売却できず、値下げすることになります。

査定価格はあくまで不動産会社が予想する「このくらいなら売却できるでしょう」という価格です。

査定価格がそのまま売却価格になるとは限らないので注意してください。

このように自分で調べた売却相場と不動産会社の査定結果から、ある程度の売却価格を予想しておきます。

2.共有者全員の同意を得る

売却価格の相場を把握したあと、共有者全員から売却の同意を得ます。

売却に迷っている人がいれば、調べた売却相場をもとに説得を試みます。当事者同士での説得が難しい場合には、不動産会社に他の共有者への交渉を任せてもよいでしょう。

共有不動産の取扱い実績が豊富な会社はこのような交渉に慣れていることが多いの、スムーズに進む可能性が高いです。

また、共有者全員の同意を得られたときには同意書を作成しておくことで、お互いの意思を強固にできるのでおすすめです。

3.売却に必要な書類を準備する

共有者全員の同意を得たあと、売却に必要な書類を準備します。

具体的には下記です。

  • 権利証(登記済証)、登記識別情報
  • 固定資産税納税通知書
  • 固定資産税評価証明書
  • 土地測量図
  • 境界確認書
  • 登記簿謄本
  • 建築確認済証
  • 検査済証
  • 登記簿謄本
  • 物件購入時の重要事項説明書
  • 物件購入時の売買契約書
  • 間取り図面
  • (マンションの場合)管理規約・使用細則

これらの書類は、正確な査定額を算出するうえでも必要になります。

また、土地測量図や登記簿謄本は法務局で取得できますが、権利証は再発行不可なので注意してください。

紛失していた場合には、事前通知または資格者代理人による本人確認情報の提供の制度を利用することになり、手間と時間がかかります。

相続で共有不動産を取得していた場合、重要書類を持っている人が誰かわからなくなっていることもあるので、共有者全員の同意を得られたら早めに書類の準備を進めるようにしましょう。

参照:法務省「新不動産登記法Q&A Q22」

4.不動産会社に売却を依頼する

重要書類が集まったら、不動産会社に売却を依頼します。

このとき、共有不動産の取扱い実績が豊富な不動産会社に依頼することが高額売却のコツです。

共有不動産は所有者が複数いる状態でトラブルが起きやすく、単独名義の不動産とは異なります。

そのため、共有不動産の経験が少ない不動産会社の場合、手続きがスムーズに進まないことや途中で売却活動が止まってしまうリスクがあります。

共有不動産の売却ではとくに不動産会社選びが重要です。

不動産会社が提案する売却プランや会社の実績、担当者の連絡のスピード感、対応時の印象などから総合的に判断します。

5.質問・内覧対応などする

不動産会社に依頼したあとの売却活動は基本的に任せて問題ありません。

不動産所有者の対応が必要になるのは、物件について質問への回答や内覧時の対応、価格交渉されたときの判断程度です。

購入希望者を探すための広告宣伝活動は依頼した不動産会社が担当することになります。

6.売買契約を結ぶ

不動産会社が売却活動を進め、買主が見つかれば売買契約を結びます。

売買条件は事前に共有者、不動産会社と協議して決めておきますが、売買契約書自体は不動産会社が用意してくれます。

売却依頼する前に集めた書類以外に準備が必要な書類は

  • 共有者全員の印鑑証明書
  • 共有者全員の実印
  • (登記上の住所と現住所が異なる共有者は)住民票
  • 共有者全員の本人確認書類

です。

印鑑証明書、住民票は発行後3ヶ月以内のものが有効なので、早く準備しすぎて有効期限外とならないように注意してください。

また、共有不動産の売買契約時には原則、共有者全員の立ち会いが必要です。仕事が忙しかったり遠方に住んでいて立ち会いが難しい場合には、代理人を立てることも可能です。その際には委任状が必要になるので、代理人に立ち会いを依頼する場合には忘れずに準備しましょう。

7.残金決済・引渡しをおこなう

ほとんどの買主は不動産を購入するときに住宅ローンを組みます。

そして、住宅ローンの審査は売買契約を結んだあとにおこなうので、売買契約を結ぶときには頭金のみを受け取り、残りは住宅ローン審査の通過後に受け取ります。

そのため、残金決済・引渡しは売買契約を結んでから2週間程度先です。

また、残金決済のタイミングで売渡証明書に署名捺印し、共有不動産の所有権移転登記をおこなうため、売買契約を結んだときと同様に共有者全員の立ち会いが必要になります。

このときも委任状を作成していれば代理人を立てられるので、必要であれば準備しておきましょう。

以上で共有不動産の売却は完了です。

共有不動産を売却するときにかかる費用

共有不動産を売却する際には、測量費や既存住宅状況調査といった売却活動にかかる費用や、印紙税・登記費用・仲介手数料といった売買契約を結ぶのに必要な費用などがあります。

費用は持分割合に応じて負担することになりますが、ここでは、どのような費用がどのくらいかかるのかを事前に確認できるよう説明します。

測量費

測量費は隣地との境界を明確にするために必要な費用です。

不動産の売却で測量は義務ではありませんが、買主が正確に敷地面積を把握し、将来隣地の所有者と境界についてトラブルが起きることを避けるためにも、求められることが多いです。

なお、すでに確定測量をおこなっており、確定測量図と境界確認書または筆界確認書があれば、あらためて測量する必要はありません。

測量費は土地の面積、土地の形状の複雑さ、杭の有無、必要な立ち会い人数などの条件によって異なりますが、相場は30万円~50万円です。個人だけでなく、国や地方自治体などの立ち会いが必要になる場合は50万円~80万円程度になります。

既存住宅状況調査【ホームインスペクション】

既存住宅状況調査(ホームインスペクション)は、建築士などの専門知識のある既存住宅状況調査技術者による建物状況調査です。

既存住宅状況調査方法基準に則り、基礎や土台・床に著しいひび割れや劣化や欠損がないかや、内壁や天井に雨漏りの跡、シロアリ被害などを調査します。

費用は5万円~10万円が相場です。

既存住宅状況調査は売却にあたって義務化されているものではないので、調査せずに売却も可能です。

ただし、調査しなかった結果、雨漏りやシロアリ被害に気づかず、そのまま売却して契約不適合責任を負う可能性もあります。

その場合、既存住宅状況調査費用以上のお金がかかることにもなるので、そのことを理解したうえで判断するようにしてください。

参照:既存住宅状況調査方法基準の解説 平成29年2月3日

印紙税

印紙税は売買契約書にかかる税金です。印紙税額は契約書に記載された金額によって異なります。

なお、租税特別措置法によって令和4年3月31日まで、不動産の譲渡に関する契約書は印紙税の軽減措置が適用されます。

契約金額と印紙税の関係は、下表のとおりです。

印紙税の軽減税率
契約金額 軽減税率
100万円超500万円以下 1,000円
500万円超1,000万円以下 5,000円
1,000万円超5,000万円以下 1万円
5,000万円超1億円以下 3万円

※契約金額が100万円超~1億円以下のものを抜粋

参照:不動産売買契約書の印紙税の軽減措置

登記費用

不動産の所有権移転登記費用は原則、買主負担となります。

売主が負担する「登記費用」は、所有権移転登記に必要な登記原因証明情報の作成のために必要な費用です。

これは所有権移転登記に立ち会う司法書士に支払うもので、3万円~5万円が相場です。

また、共有不動産の登記情報と実際の所有者の住所や氏名が異なっている場合には「登記名義人表示変更登記」、抵当権が設定されたままの場合には「抵当権抹消登記」が別途必要となり、その分の費用も追加で必要になります。

仲介手数料

仲介手数料は、共有不動産の売却が成立したときにその取引を仲介した不動産会社に支払う費用です。

不動産業者が受け取れる仲介手数料は宅地建物取引業法で上限額が定められています。その金額は下表のとおりです。

なお、消費税は別途でかかります。

仲介手数料の上限
売買価格1 報酬額の料率
200万円以下の金額 5%
200万円を超え400万円以下の金額 4%
400万円を超える金額 3%

例えば、共有不動産を2,000万円で売却したときには次の計算式によって仲介手数料の上限は66万6,000円です。

{200万円×5% + (400万円-200万円)×4% + (2000万円-400万円)×3% } × 1.1 = 66.6万円

この仲介手数料の上限額は売買価格が400万円を超える場合、下記の式のように簡単にできます。

{(売買価格×3%) + 6万円} × 1.1 = (仲介手数料の上限額)

そして、多くの不動産会社は仲介手数料を上限額で設定しています。

そのため、交渉すれば仲介手数料を下げてもらえるかもしれませんが、注意が必要です。

不動産会社の利益は仲介手数料が大半を占めるので、仲介手数料の減額は利益を減らすことにつながります。その結果、いい加減な売却活動をされてしまい、なかなか売却が成立しないことにもなりえます。

仲介手数料の安さのみで不動産会社を選ぶのではなく、1つの判断材料に留め、共有不動産の取扱い実績や担当者の対応などから総合的に選ぶことをおすすめします。

参照:公益社団法人全日本不動産協会 「家を売る。」ガイドブック

譲渡所得税

譲渡所得税は、不動産を売却したときの収益にかかる税金です。

課税対象となる「譲渡所得額」は、売却価格から取得費と譲渡費用、特別控除を引いて計算します。

取得費は共有不動産を取得したときの購入代金やその際に支払った仲介手数料です。共有不動産を相続によって取得していた場合、相続税の申告期限の翌日から3年以内に売却していれば相続税も取得税に加算できます。

譲渡費用は売却のためにかかった費用で仲介手数料や測量費などです。

共有不動産が自宅だった場合には最大3,000万円の特別控除の適用を受けられます。

そして、このようにして算出される譲渡所得に対してかかる税金は、共有不動産の所有期間によって異なります。

売却した年の1月1日時点で所有期間が5年を超えている場合は長期譲渡所得、5年以下の場合は短期譲渡所得として下表のような税率です。

譲渡所得の税率
所得税 住民税
長期譲渡所得 15% 5%
短期譲渡所得 30% 9%
例えば、令和3年に共有不動産を売却した場合、その不動産の取得が平成27年12月31日であれば「長期譲渡所得」、平成28年1月1日であれば「短期譲渡所得」になります。

なお、相続によって共有不動産を取得していた場合、所有期間は亡くなった方の取得したときから引き継がれます。

したがって、相続して1年以内であっても、被相続人が所有期間5年を超えていれば「長期譲渡所得」となります。

参照:相続財産を譲渡した場合の取得費の特例 国税庁 

参照:相続や贈与によって取得した土地・建物の取得費と取得の時期 国税庁

共有不動産を売却するときの注意点

共有不動産の売却について最後に、注意点をお伝えします。

共有不動産は複数の権利者がおり、権利関係が複雑で単独名義の不動産売却に比べてトラブルが起こりやすい取引です。

そのため、ここで紹介する下記の3つのポイントは注意点として事前に確認しておきましょう。

  • 売却には共有者全員の同意が必要
  • 最低売却価格を事前に決めておく
  • 共有不動産の実績が豊富な不動産会社に依頼する

売却には共有者全員の同意が必要

共有不動産は共有者全員が持分として所有権をもつため、不動産全体の売却には共有者全員の同意が必要です。

そのため「連絡が取れない」などの理由があれば他共有者の意思を無視して売却できる、というわけではないので注意してください。

そして、共有者全員の立ち会いが必要になるタイミングがあることも覚えておきましょう。

印鑑証明書など共有者各自で取り寄せる必要があるので、共有不動産の売却には共有者全員の協力が不可欠です。

また、売却活動開始から売却成立まで半年近くかかることもあります。期間が空いても変わらずに共有者全員が売却の意思を持ち続けることが大切です。

最低売却価格を事前に決めておく

実際に買主が見つかっても、売却価格について共有者間で合意を得られないことが多いです。

「早く売却したい」と思っている人はどのような金額でもとりあえず売れたらすぐに売りたいと考えますし「できるだけ高く売りたい」と思っている人は値下げ交渉に頑として応じることはないでしょう。

その結果、購入希望者はいるのに、共有者間での意見を揃えようとしている間に他の物件に決められてしまうことになります。

購入希望者が見つかり、値下げ交渉があったときにもスムーズに意思決定して売買契約まで進められるように、最低売却価格を事前に決めておきましょう。

その価格を決めておけば、価格交渉の際にもすぐに受け入れるかどうか判断できます。

共有不動産の実績が豊富な不動産会社に依頼する

共有不動産を売却したいときには、共有不動産の実績が豊富な不動産会社に依頼するようにします。

実績については不動産会社のホームページを見ればわかることも多いですが、気になった不動産会社に問い合わせてもいいでしょう。

共有不動産は共有者全員の同意を得て売却する必要があり、ときには共有者の説得など単独名義の不動産売却にはない業務が発生することがあります。

その際に実績が乏しければ適切な対処ができず、期待する売却活動をしてもらえない可能性があります。

そのため、売却活動を依頼する不動産会社は共有不動産の取扱い実績が豊富な会社を選ぶようにしましょう。

以上が共有不動産を売却する場合に知っておきたい流れや費用、注意点です。

次に、共有不動産を賃貸に出す場合の流れについて解説します。

共有不動産を賃貸に出す流れ

共有不動産を賃貸に出すことは、共有不動産の「管理行為」にあたります。

共有不動産の「管理行為」は「変更行為」にあたる売却とは異なり、持分の過半数の同意で手続きを進められます。

したがって、一部の共有者の意見が賃貸に出すことに反対だったとしても、その共有者たちの持分割合が合わせて1/2未満であれば無視できます。

共有不動産を賃貸に出す流れは、持分の過半数の同意を得る以外は通常の不動産と同じです。

  1. 家賃相場を調べる
  2. 収支をシミュレーションする
  3. 持分の過半数の同意を得る
  4. 賃料査定を不動産会社に依頼する
  5. 管理を委託する不動産会社と契約する
  6. 入居者を募集する
  7. 入居申込書を審査する
  8. 賃貸契約を結ぶ

1.家賃相場を調べる

近隣で似た条件の物件を探し、家賃相場を調べます。

間取り、築年数、最寄り駅までの距離を重視して絞りましょう。売却するときと同じようにSUUMOやホームズのような不動産ポータルサイトを利用すると便利です。

SUUMO
ホームズ

2.収支をシミュレーションする

家賃相場から物件を貸し出すときの家賃を仮定して、収支をシミュレーションしましょう。

最初に、貸し出す前に物件をきれいな状態にするためのクリーニング費用や壁紙や床の張り替えのリフォーム費用、老朽化した設備の交換費用がかかります。

そして毎月の支出として、物件の管理を管理会社へ委託する場合には管理費が発生します。

また、固定資産税や都市計画税、家賃収入にかかる所得税・住民税などの税金は毎年必要なので、計画的に貯めていくことが必要です。

給湯器やエアコンなどの設備は故障が発生した際には原則、貸主負担で修繕・交換します。その費用も用意しておく必要があります。

このように賃貸物件としての運用には多くの費用が発生するため「賃貸に出してみたけど全然手元にお金が残らなかった」とならないように、しっかりと収支シミュレーションしておきましょう。

難しく感じたり、忙しくて時間が取れない場合には、家賃相場を調べるところから不動産会社に相談してもよいでしょう。

ただし、不動産会社にいわれたことをそのまま鵜呑みにするのではなく、自分で情報を吟味して判断することが大切です。

3.持分の過半数の同意を得る

共有不動産を貸し出すには、持分の過半数の同意が必要です。

ここでのポイントは過半数の同意が「共有者」ではなく「持分」ということです。

例えば、持分をAさんが2/3、BさんとCさんがそれぞれ1/3ずつもっているとします。この場合、Aさんのみで持分の過半数となるため、Aさん単独で貸し出すことを決められます。

とはいえ、共有者であるBさん、Cさんに報告なしに貸し出すと、借主と他の共有者の間でトラブルが発生する可能性もあり、借主に迷惑をかけてしまいます。

貸し出す前に把握している共有者には連絡しておきましょう。

4.賃料査定を不動産会社に依頼する

共有不動産を賃貸に出すために必要な同意が集まったら、実際に貸し出す際の家賃の査定を不動産会社に依頼します。

このとき、手間と時間はかかりますが、複数の不動産会社に査定を依頼した方がよいでしょう。

1社のみに依頼した場合、その査定結果が妥当かどうかの判断が難しいです。複数の不動産会社の査定結果と自分で調べた家賃相場を比較することで、判断しやすくなります。

不動産会社が査定結果を提示するときには、根拠となる資料も出してもらえるはずなので、その内容や担当者からの説明を聞いて信頼できる不動産会社へ依頼しましょう。

5.管理を委託する不動産会社と契約する

賃貸物件として貸し出すと、家賃の集金や滞納があった際の督促、入居者募集、入居者対応などの細々とした業務が発生します。

これらの業務を自分で対応できるのであれば自主管理としてもよいですが、不動産投資を専業でやっている場合を除いて、管理を不動産管理会社に委託した方が手軽でおすすめです。

管理業務を丸投げしても、費用は家賃の3%~7%が相場なので、大きな負担にはなりません。

ただし、管理会社のなかには期待したような仕事を全然してくれないところもあるので、その会社が管理している他の物件の状況や担当者の印象から慎重に見極めることが大切です。

6.入居者を募集する

管理会社を決めたら、入居条件を決めて入居者を募集します。

入居条件は物件の間取りから単身者向けかファミリー向けか、もしくはルームシェア可とするかなどを決めます。

近隣の物件がどのような条件で入居者を募集するか調べるのも、入居条件を決める材料になるのでおすすめです。

そして、入居者募集の活動と入居希望者がいるときの内覧は、基本的に管理会社または不動産仲介業者が対応してくれます。

そのため、実際の入居者募集は、次に説明する入居申込書が届くまで待っているだけでよいでしょう。

7.入居申込書を審査する

入居希望者が物件への入居意思を固めると、勤務先や年収、保証人の情報を記載した入居申込書が届きます。

管理業務を委託していても入居者の審査は一般的に貸主が対応します。

記載内容に虚偽がないか、問題なく家賃を払ってもらえる年収かを判断しましょう。

8.賃貸契約を結ぶ

入居審査のうえ問題なければ、入居希望者と賃貸契約を結びます。

このとき、過半数の持分で認められるのは期間が3年以内の定期借家契約ですので注意してください。

3年以上の契約または更新を貸主からは原則拒否できない普通借家契約の場合には、共有者全員の同意が必要になります。

以上が、共有不動産を賃貸に出す際の流れです。

共有不動産を賃貸に出すときにかかる費用

続いて、共有不動産を賃貸に出すときにかかる費用を詳しく説明します。

初期費用としてリフォーム費用がかかり、入居者が決まった際には不動産仲介業者へ仲介手数料を支払います。

そして、定期的な費用として、毎月の管理会社への委託費用と毎年の税金です。

リフォーム費用

共有不動産をそのまま賃貸物件として貸し出せる状態であることは稀です。

いままで住めていたと物件でも、賃貸物件として入居者を募集するに問題がある場合がほとんどです。

例えば、壁紙や床の張り替え、劣化している設備の修繕・交換が必要になります。そのほか、キッチンや浴室が古ければ最新のものに取り替えるリフォームも、入居者募集のために必要になるかもしれません。

リフォーム費用はその規模によって異なりますが、築年数の古い物件であれば、100万円~150万円を想定しておいた方がよいでしょう。

そして忘れてはならないことが、リフォームする目的は共有不動産の利回りを高めるためだということです。

リフォームに多くのお金をかけてきれいな物件にしても、その費用を回収できなければ意味がありません。

リフォーム費用をかけることでどれだけ利回りが高まるのか、何年でリフォーム費用を回収できるのか綿密にシミュレーションし、リフォームの予算を決めましょう。

仲介手数料

入居者が不動産仲介業者から決まった際に支払う費用が仲介手数料です。

仲介手数料は不動産売却と同様に上限額が宅地建物取引業法で定められており、その金額は「家賃の1ヶ月分」となっています。

仲介手数料は借主からも受け取るケースが多いので、貸主が支払う金額は家賃の0.5ヶ月分であることが多いです。

なお、不動産会仲介業者によっては、借主または貸主の一方が家賃の1ヶ月分を支払うこともあるので、入居者募集を依頼している不動産仲介業者がどのように定めているか確認しておきましょう。

管理会社への委託費用

共有不動産の賃貸管理を管理会社に委託した場合の費用です。

そのため、自主管理であれば委託費用は発生しません。

委託費用は家賃に一定の割合を掛けた金額で定められていることが一般的です。その相場は約3%~7%です。

つまり、家賃10万円で賃貸に出している場合にかかる費用は毎月3,000円~7,000円になります。

もちろん管理会社へ委託する業務の範囲を狭めれば委託費用は抑えられます。管理会社への委託費用を考える際には単純な費用の大小だけでなく、その費用に含まれる業務内容も合わせて考えることが大切です。

毎年の各種税金

共有不動産を賃貸に出すと固定資産税・都市計画税のほかに、不動産収入に対して所得税・住民税がかかるようになります。

固定資産税・都市計画税

固定資産税は毎年1月1日現在の所有者に課税される税金です。共有不動産の納税通知書は市区町村から代表者に送付されますが、税負担は持分割合に応じます。

そして、固定資産税、都市計画税はそれぞれ課税標準に一定の割合を掛けた金額となります。その割合は、固定資産税で1.4%(標準税率)、都市計画税で0.3%(制限税率)です。

なお、課税標準は固定資産税台帳に記載されている価格のことで、不動産評価額に軽減措置が適用されたものなので、一般的な戸建てで年間10万円~15万円が相場です。

また税率は市区町村によって異なる場合があるので、共有不動産がある地域の税率を確認しておきましょう。

不動産収入に対する所得税・住民税

共有不動産を賃貸に出すことで得られた収益は課税対象です。

売却するときとは異なり、給与所得などの他の所得と合算されて税額が算出される「総合課税」となっています。

そのため、所得税・住民税は不動産収入のみでは決まらず、あなたの年収も影響します。

このとき余計な税金を納めなくてすむように、経費はしっかりと把握して計上することが大切です。

難しく感じる場合には専門家である税理士に依頼すると確実なのでおすすめです。

共有不動産を賃貸に出すときの注意点

共有不動産を賃貸に出すときには、持分の過半数の同意で可能です。

ただし、自由に物件を貸し出せるということではありません。持分の過半数で認められる賃貸の期間は、建物の場合は原則3年以内です。

そして、共有不動産の賃貸経営では、その収入を代表者が独占するなどのトラブルになることが多いです。

そこで最後に、共有不動産を賃貸に出すときに知っておきたい注意点として下記3つを解説します。

  • 他の共有者に賃貸に出す旨を報告する
  • 賃貸契約期間は原則3年以内
  • 賃貸収入の分配割合を明確にする

他の共有者に賃貸に出す旨を報告する

共有不動産は持分の過半数の同意で賃貸に出せます。

だからといって、他の共有者に無断で手続きを進めると、あとから入居者とトラブルになる可能性があります。

なぜなら、なにも知らされていなければ、他の共有者にとっては「他人が勝手に自分の不動産に住んでいる」と思うからです。

そのため、持分の過半数の同意を得たあと、他の共有者から同意を得る必要まではありませんが、賃貸に出す旨を報告するようにしましょう。

賃貸契約期間は原則3年以内

共有不動産に対して、持分の過半数の同意で実行可能な行為は管理行為までです。

そして、共有状態にある建物を第三者に貸し出す期間が3年以内の場合は「管理行為」と判断されるので、賃貸契約期間は原則3年以内です。

3年を超える契約または更新のある普通借家契約を結ぶ場合には「変更行為」として、共有者全員の同意が必要になるので覚えておいてください。

なお、共有不動産が土地のみで賃貸に出す場合、賃貸借期間が5年以内であれば「管理行為」とみなされます。

賃貸収入の分配割合を明確にする

賃貸収入は持分割合に応じて分配することが原則です。

共有不動産を活用することで生じる収益ですので、賃貸に出すことに同意していない共有者に対しても収益は分配する必要があります。

その共有者があえて「収益は受け取らない」と明言していない限り、適切に収益を分配しなければ「不当利得」として、後日他の共有者から返還請求を受けることになるので注意が必要です。

また、賃貸収入だけでなく賃貸運営にかかる費用の分配割合についても明確にしておきましょう。

まとめ

ここまで解説してきたように共有不動産を「売却する」「賃貸に出す」どちらにもメリット・デメリットがあります。

とはいえ「売却」にはデメリットらしいデメリットがありません。共有不動産に将来住める可能性が無くなる程度です。

そのため「3年後に共有不動産を使うことが決まっている」くらいの特別な理由がない限りは「売却」を選ぶほうがよいでしょう。

もし「賃貸に出したい」と売却に反対する共有者がいる場合には、説得する際にこの記事の内容を参考にしてください。

そして、当事者同士での話し合いがうまく進まなければ、専門家である不動産会社に共有者への説得もあわせて依頼することをおすすめします。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です