共有私道に接する土地の売却前に知っておくべきこと!トラブル例と解決方法も解説

土地の売却は日常的なことではなく、分からないことだらけで不安になるものです。

売却したい土地が共有私道に接しているとなると、より不安になるのではないでしょうか。

そこで今回の記事では、共有私道に接する土地の売却前に知っておくべき5つのことと共有私道に接する土地のトラブル事例と解決法について、詳細に解説していきます。

土地を売却することになった、これから売却するかもしれないという方はまず5つのポイントを知っておきましょう。

そして、どのようなトラブルが起こりどのように解決すれば良いのかまで事前に知っておくことで、慣れない売却手続の不安を少しでも拭うことができます。

共有私道に接する土地の売却前に知っておくべき5つのこと

共有私道に接する土地を売却する際には、気をつけなければいけないポイントが5つあります。

5つのポイントは以下のとおりです。

  • 共有私道は2種類ある
  • 私道が接道義務を満たしているか確認する
  • 掘削承諾を得なければいけない
  • 共有私道の持分割合を把握する
  • 私道にかかる費用を把握する

土地の売却に慣れているという人は多くありません。

何に気をつけて進めていけばよいのかさえ検討がつかないということもあるはずです。

まずは共有私道に接する土地の売却前に知っておくべき5つのことを丁寧に解説していきます。

共有私道は2種類ある

道路には公道と私道があることはご存知ですね。

公道とは国や都道府県などが管理している道路を指し、私道は個人で管理している道路を指します。

さらに、私道を複数人で共有しているとそれは共有私道となります。

共有私道も「共同所有型私道」と「相互持合い型私道」の2種類があります。

この2つは共有の仕方が違い、権利関係も異なるためどちらに該当する私道なのかを把握しておかなければいけません。

共同所有型私道

共同所有型私道
共同所有型私道 とは、1つの私道全体を複数人で共有している状態の道路です。

共有者は誰もが等しく私道全体の権利を有しています。

そのため共有者の許可なく通行ができますが、「水道管を引き直したい」という場合には共有者の同意が必要です。

なぜなら共有物に関する管理行為となり、持分価格に従いその過半数の同意が必要であると民法第252条に定められているからです。

参照:e-Govポータル「民法第252条」

ただし、共同所有型私道は個人の判断では何もできないのかというとそうではありません。

例えばアスファルト舗装が陥没しているという場合であれば、保存行為となり共有者の同意を得なくても補修することができます。

相互持合型私道

相互持合型私道とは私道全体を分筆し、分筆された部分的な私道を近隣住民がそれぞれ所有している状態の道路です。

つまり、1つの私道を縦や横などに分けてそれぞれが別名義の土地となっています。

例えばAさんBさんCさんの家が横並びに建っており、Aさん宅前からCさん宅前まで30mの共有私道があったとします。

Aさん宅の前にある10mはAさんの持分、Bさん宅の前にある10mはBさんの持分、Cさん宅の前の10mはCさんの持分というように、どこは誰の道路と分けて考えるのが相互持合型私道です。

持分は縦に切り分けたり横に切り分けたりだけでなく、縦と横を複合させて切り分けることもあり、自身の家の前の道路が所有する道路ではないこともあります。

接道義務を満たしているか確認する

私道に面している土地を売却する前に、接道義務を満たしているか確認する必要があります。

もしも接道義務を満たしていなければ、再建築不可物件として建て替えや増改築ができません

建て替えなどができない再建築不可物件は使用が難しくなるため、資産価値が低下する傾向にあります。

相場よりも安くなり、7~8割程度の価格となるのが一般的です。

ここで気になる接道義務とは、建築基準法に定められています。

その内容は「幅員4m以上の道路に敷地が2m以上」接していなければ建物を建てられないというものです。

自身の土地が接道義務を満たしているか判断するために具体例を見ておきましょう

接道義務を満たしているケース

接道義務を満たしているケース

上記のイラストでは、AもBも幅員4mの道路に敷地が2m以上接しているので接道義務を満たしています。

接道義務を満たしていないケース

接道義務を"満たしていない"ケース

こちらのイラストでは、土地が道路に2m以上接しているものの、道路の幅が4m未満のため接道義務を満たしていません。

接道義務を満たしているようで満たしていないケース

接道義務を満たしているようで"満たしていない"ケース

そして、接道義務を満たしていると間違えやすいのがこちらのイラストのようなケースです。

幅員4mの道路に土地が2m接しています。

しかし、よく見ると土地の一部が細くなり1.9mの部分があります。

接道義務を満たすには土地のどこかが2m以上接していればよいということではありません。

建物が建つところまで、ずっと2m以上を維持する必要があります

部分的に2mに満たない箇所があるこちらのケースは、接道義務を満たしていないことになります。

なかには、「古くから土地を所有しているが接道義務を満たしていないと言われたことなどない」と思う方もいるかもしれません。

接道義務が定められる前から建っている建物は、接道義務を満たしていないと「既存不適格建築物」と呼ばれます

「既存不適格建築物」をそのまま維持するなら問題はないのです。

増改築や建て替えをする際に問題となってきます

買主は建替えを前提に物件の購入を検討しているかもしれません。

しかし購入後に接道義務を満たしていないことが分かり建替えができないと、売主とトラブルになることが想定できます。

そのため売主は接道義務を満たしていないことを告知しなければいけません。

伝えていなかった場合、契約の解消や賠償責任まで発展する可能性もあります。

このことからも、接道義務を満たしているかどうかを確認しておく必要があります

参照:e-Govポータル「建築基準法第42条、第43条」

掘削承諾を得なければいけない

掘削(くっさく)承諾とは、水道管やガス管を引き直すために私道を掘ったり削ったりしてもよいという返事をもらうことです。

土地の売却後、買主は家を新築したり建て替えたりするかもしれません。

そうなると共有私道の下を通して水道管やガス管を引き直すことがあります。

水道管やガス管の埋設・引き込み工事は地面を掘ったり削ったりしますね。

これらの工事を掘削工事と呼びます。

共有私道を掘削するには、共有者から承諾を得なければいけません

ここで、共有私道が「共同所有型私道」なのか「相互持合型私道」なのかで対応が異なってきます

「共同所有型私道」であれば共有者全員から掘削の承諾を得る必要があり、「相互持合型私道」であれば掘削予定の部分の所有者に掘削承諾を得なければいけません。

後になって、掘削承諾を得られないので工事ができないというようなトラブルを避けるためにも、売却前に掘削承諾書を作成し署名捺印を貰っておくと安心です。

共有私道の持分割合を把握する

道路全体の一定の比率を有している場合
共有私道ではそれぞれがどれくらいの持分を所有しているのかを明確にすることが大切です。

なぜなら、共有私道にかかった費用などは持分の割合に応じて負担するのが一般的だからです。

上記のイラストのように共有私道の持分が1/4ずつなのであれば、工事費の負担も1/4ずつにするということです。

売却後に買主が共有私道の工事費を負担しなければいけないようなことが起こると、私道の共有者から工事費を請求されるかもしれません。

買主はなぜその金額を負担しなければいけないのか、そして妥当な金額を請求されているのか、持分割合を把握していなければ判断ができません。

このようなことから、売却前に共有私道の持分割合を確認しておくことが大切になってきます。

持分割合の確認方法

では、共有私道の持分割合を把握するにはどうしたらよいのか

持分割合は、登記簿謄本(登記事項証明書)で確認ができます

私道の地番が分からなければ、まずは法務局や登記所などで私道の公図を取得します。

公図には私道の地番が記載されているので、その地番から登記簿謄本(登記事項証明書)を取得します。

登記簿謄本(登記事項証明書)にはどのような不動産なのか、所有者は誰なのか、そして共有であれば誰がどれくらいの持分を所有しているのかが記載されています。

法務局の窓口で公図や登記簿謄本(登記事項証明書)を取得することもできますが、自宅や会社にいながら取得ができるオンライン申請が便利です。

例えば窓口で登記簿謄本(登記事項証明書)の交付を請求すると手数料600円が必要ですが、オンラインで申請し、受取り方法を郵送にすると手数料は500円になります。

また、窓口の業務取扱時間は平日8時30分~17時15分までです。

オンラインでは平日8時30分~21時まで申請可能となっており、日中は出向くことが難しい方にとっても便利な方法です。

公図は以下のサイトから取得できます。
参照:一般財団法人 民事法務協会「登記情報提供サービス」

登記簿謄本(登記事項証明書)の取得について、詳しくは以下のページを参考にしてください。
参照:法務局「オンライン申請のご案内」

私道の持分がない場合の対処法

売却したい土地が私道に接しているが、私道の持分はもっていないというケースもあるかもしれません。

その場合、暗黙の了解で私道を利用させてもらっていたということもあるでしょう。

しかし土地の所有者が変わったことを機に私道を使わせてもらえなくなる可能性もあります。

暗黙の了解で私道を使わせてもらっているという状態では、買主にとっては不安材料となり購入をためらう可能性もあります。

そのため、私道の持分を持っていないのであれば以下のような対策が有効です。

通行地役権を設定してもらう

私道の持分がないのであれば、通行地役権を設定してもらいましょう

通行地役権とは、私道の所有者でない人が私道を通行できる権利のことです。

「利用料が発生するのか」「金額をどのように設定するのか」「車両の通行も可能か」などを、通りたい私道の所有者と相談して決めます。

話し合いがまとまれば司法書士や土地家屋調査士に依頼し、契約書の作成や登記を行います。

登記は必須ではなく、両者の約束だけでも問題ありません。

しかし登記することに大きなメリットがあります。

例えば、将来的に私道の所有者が変わって「もう通行はできません」と言われる可能性があります。

このような場合も、通行地役権設定登記をしていると「この土地の通行地役権を所有している」と裁判所などに主張することができるのです。

私道の持分がないのであれば、通行地役権設定登記まで済ませておくと安心です。

私道持分を買う

土地に面している私道に通行地役権を設定してもらうのではなく、私道の持分を買うという方法もあります。

持分があれば私道を自由に使うことができ、私道の利用料などを支払う必要もありません。

ただし、私道を買うには資金が必要です。

利用料として支払い続ける金額と私道を買う金額、総合的にどちらが得なのかを検討しなければいけません

私道にかかる費用を把握する

共有私道では、私道の共有者間でルールを定めていることがあります。

私道の補修工事を定期的に行う、掘削工事が必要な際には承諾料を共有者に支払うなど、費用が発生するルールもあります。

購入後にその費用を支払うことを考えると、年間でどれくらいの費用が発生するのか買主は知っておきたいと考えるでしょう。

買主は継続的に必要となる費用も考慮して土地の購入を判断するはずです。

売却価格の設定にも影響するため、私道にかかる費用を算出しておくと話しがスムーズに進みます

私道にかかる費用を算出する方法

私道にかかる費用は以下のようなものが考えられます

  • 私道の補修工事費用
  • 掘削工事の承諾料
  • 私道の固定資産税・都市計画税

私道の補修工事費用は、共有者間で補修工事を定期的に行うと決めているのであれば前回いつ工事をし、そのときにどれくらいの費用を負担したのかが分かっているはずです。

そのときの情報を基に、「前回は○年に工事をし、費用は○円ほどかかった」という情報を買主に伝えます。

掘削工事の承諾料についても、共有者間で取り決めているのであれば契約書などが手元にあるかと思います。

今後は買主が負担することになるので、私道の共有者間で締結した契約書は揃えておきましょう。

共有私道の先が行き止まりなどで周辺住民しか使わない道路であれば、固定資産税と都市計画税がかかります。

毎年かかる税金なのでこちらも納税通知書などで正確な金額を把握しておきます

共有私道に接する土地のトラブル事例と解決法

前項では、共有私道に接する土地を売却する際に気をつけたいポイントを解説してきました。

トラブルを避けるためにさまざまなことに気をつけていても、問題が起こることもあります。

ここからは共有私道に接する土地を売却する際の代表的なトラブルを3つ紹介し、解決方法も解説していきます。

代表的なトラブルとは以下の3つです。

  • 私道が建築基準法を満たしていない
  • 掘削承諾が得られない
  • 売却前に私道の修繕をしたいが同意を得られない

これらのトラブルには解決法があります。

解決法があることを知っていると余計な心配をせずに対処できるのではないでしょうか。

接道義務を満たしていない

土地の売却を検討していると、接道義務を満たしていなかったということがあります。

前述したように、接道義務とは建築基準法第43条に定められている「幅員4m以上の道路に敷地が2m以上」接していなければ、建物を建て替えられないというものです。

このままでは買主が建て替えや増改築をしたくてもできず、資産価値が低下してしまいます。

なかなか買主が見つからないということもあるかもしれません。

そこでこの問題を解決するには、セットバックという方法があります。

参照:e-Govポータル「建築基準法第43条」

接道義務を満たすためセットバックする

セットバックとは、道路の幅を4m確保するために土地を後退させるという方法です。

どれくらいの幅を後退させなければいけないのかは、主に2つのパターンがあります。

道路の向かい側も宅地であれば、道路の中心線からそれぞれが2mセットバックしなければいけません

例えば幅が3mの道路を挟んでいるなら、道路の中心線から境界線まで現状では1.5mです。

2mセットバックするには、向かい合うお互いが0.5m後退することになります。

もうひとつのパターンは、道路の向かい側が川や線路などの場合です。

道路の向かい側にあるものが境界線を動かせない場合は、建物が建つ側だけでセットバックしなければいけません

例えば道路の幅が3mで向こうが川となっている場合、境界線を1m後退させることになります。

掘削承諾が得られない

掘削承諾を得ようとしても、応じてくれないなどのトラブルがあります。

「断られる理由が分からない」「嫌がらせで断られている」「不当な金銭を要求される」など、その理由はさまざまです。

このままではライフラインに必要不可欠な水道やガスの工事ができないと途方にくれるかもしれません。

このようなトラブルが生じた場合は、土地の所有者が承諾しないのだから仕方ないと諦めるのではなく専門家に依頼しましょう

交渉を弁護士に依頼する

掘削承諾が得られないというトラブルは珍しいものではありません

過去には、私道所有者の承諾がなくても掘削を認めた裁判例もあります。

法的な根拠をもっての判決ですが、全てのケースが当てはまるわけではなく、掘削が認められなかった裁判例もあります。

しかし、不動産に強い弁護士に依頼すれば合理的な妥協点を探ることができ、裁判になる前に解決することもあるのです。

弁護士に依頼する際の費用は50万円前後が目安となります。

安い金額ではないですが、個人間での交渉ではスムーズに進まなかった場合、弁護士に依頼することで解決への糸口を掴むことができるでしょう。

売却前に私道の修繕をしたいが同意を得られない

土地に接する私道の状態が悪いと、売却したい物件のイメージも下がる可能性があります。

そのため私道の修繕をしたいが、共有者の同意を得られないというトラブルがあります。

共有者が同意をしない理由として考えられるのが費用負担です。

「多少水はけが悪くても困るほどではない」「お金をかけるほどではない」と言われてしまうと解決策がないように感じますが、補助金や助成金が受けられることを知らない可能性もあります。

自治体の助成制度があることを知らせる

共有私道の修繕をすると持分の割合に応じて費用を負担するのが一般的です。

持分のみの負担だとしても、持分割合が多ければ負担額は大きくなります。

修繕する規模が大きいほど費用も高くなってしまうでしょう。

しかし、私道の整備には自治体から一定の条件のもと補助金や助成金が交付されます

例えば東京都練馬区では、舗装の場合の助成額は通り抜け道路で「区算定工事費の90%」、行き止まり道路で「区算定工事費の80%」となっています。

持分にかかった費用を全額負担するのではないことを知れば、私道の修繕を前向きに検討してくれる可能性も高くなります。
参照:練馬区「私道整備の助成制度」

まとめ

不慣れな土地の売却だからこそ、知識を集めるところから慎重にスタートします。

知らなかったという理由で損をしたり、トラブルに巻き込まれたりするのは避けたいものです。

共有私道に接する土地を売却する際には、「共有私道は2種類ある」「私道が接道義務を満たしているか確認する」「掘削承諾を得なければいけない」「共有私道の持分割合を把握する」「私道にかかる費用を把握する」などのポイントを押さえ、トラブルが起こった際には冷静に対処できるように準備しておきましょう

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