共有名義不動産の「建て替え・取り壊し」で注意したい4つのこと!共有状態の解消方法についても解説

共有名義 建て替え 取り壊し

「共有名義の不動産を建て替えたい」「取り壊したい」と考えたとき、共有名義だからこそ気をつけるべきことがあるのでは?と心配になります。

そもそも自分の意思だけで進めてもよいものなのか、発生した費用はどのように負担すればよいのかなど疑問も湧いてくることでしょう。

老朽化が進んでいることが原因での建て替えや取り壊しを検討しているのに、共有者の同意を得られず困っているというケースもあります。

この記事ではこれらの不安や疑問を解消するために、共有名義不動産の「建て替え・取り壊し」の際に気をつけるポイントを4つ紹介します。

また、今後のトラブルを避けるための共有状態の解消方法についても解説します。

ぜひ参考にしてみてください。

共有名義の建物を「建て替え・取り壊し」する際に気をつけること4つ

共有名義の建物を「建て替え・取り壊し」する際には気をつけなければいけないことが以下のように4つあります。

  • 共有者全員の同意を得なければいけない
  • 住宅ローンが残っているなら金融機関の承諾も必要
  • 「建て替え・取り壊し」の費用は持分に応じて決める
  • 固定資産税・都市計画税が高くなる可能性を考慮する

どのようなことに気をつけるべきなのか、具体的に解説していきます。

共有者全員の同意を得なければいけない

共有名義の不動産は所有者が複数人いるということです。

そのため、その不動産に対して何かをするときには共有者の同意が必要になります

ただし過半数の同意だけでできることもあったり、単独でできることもあったりします。

3人で共有する不動産

3人で不動産を共有したときの選択肢

共有名義の不動産に対しておこなう行為は「変更(処分)行為」「管理行為」「保存行為」の3つに分けられます。

上の図にあるように、この記事で解説する「建て替え・取り壊し」は変更行為にあたり共有者全員の同意が必要です。

<民法第251条>
各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更を加えることができない。

参照:e-Govポータル「民法第251条」

勝手に話しを進めてよいものかと考えていた人は、まず共有者全員の同意を得なければいけません。

全面的価格賠償

全面的価格賠償とは、他人の共有持分を買取って単独名義にすること

倒壊の危険性があるなら「取り壊し」は同意がなくても可能

建物の「建て替え・取り壊し」には共有者全員の同意が必要だと解説しました。

しかし老朽化が進んで倒壊や破損などの危険性がある場合は、共有者全員の同意なく単独で「取り壊し」が可能です。

なぜならその危険な建物の取り壊しは「保存行為」に該当すると考えられるからです。

<民法第252条>
共有物の管理に関する事項は、前条の場合を除き、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。ただし、保存行為は、各共有者がすることができる。

参照:e-Govポータル「民法第252条」

老朽化によって危険となった建物の「取り壊し」は単独でもできますが、その後に建て替えるなら共有者全員の同意が必要となるので気をつけましょう。

住宅ローンが残っているなら金融機関の承諾も必要

住宅ローンの支払を終えているなら、共有者全員の同意を得るだけで建て替えや取り壊しが可能です。

しかし住宅ローンが残っているなら、借り入れをしている金融機関の承諾も必要となります。

住宅ローンを受ける際にはその住宅ローンに対して抵当権が設定されているからです。

<民法第369条>
抵当権者は、債務者又は第三者が占有を移転しないで債務の担保に供した不動産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。

参照:e-Govポータル「民法第369条」

抵当権とは、債権の代わりに不動産の所有権を設定しているということです。

建物を壊す行為は抵当権を設定している金融機関の権利を奪うことになります。

そのため損害賠償請求をされる可能性もあるので、勝手に建て替えや取り壊しをすることはできません。

まずは残債を確認し金融機関に相談しましょう。

ほとんどのケースでは、抵当権を解除する条件として残債の一括返済を求められます。

なぜなら、建物を取り壊してしまうとローン返済を待ってもらえる「期限の利益」という権利を喪失するからです。

<民法第137条>
次に掲げる場合には、債務者は、期限の利益を主張することができない。
1.債務者が破産手続開始の決定を受けたとき。
2.債務者が担保を滅失させ、損傷させ、又は減少させたとき。
3.債務者が担保を供する義務を負う場合において、これを供しないとき。

参照:e-Govポータル「民法第137条」

ここで一括返済ができれば問題は解決します。

一括返済ができなければ別の方法を金融機関と相談しなければいけません。

分割返済や無担保での借り入れが可能か、抵当権を他の不動産に付け替えてもらえるかなどを相談しましょう

別の金融機関を利用し、建て替えや取り壊し費用に加えて返済中の住宅ローンの借り換えが可能かも検討するとよいでしょう。

「建て替え・取り壊し」の費用は持分に応じて決める

共有名義の建物を建て替えたり取り壊したりする際には、その費用を誰がどのように負担するかを決めなければいけません

一般的には持分割合に応じて費用を負担するケースが多いです。

民法にも各共有者が持分に応じた負担をするようにと定められています

<民法第253条>
各共有者は、その持分に応じ、管理の費用を支払い、その他共有物に関する負担を負う。

参照:e-Govポータル「民法第253条」

例えば、取り壊し費用が150万円の建物を兄弟2人で共有していたとします。

持ち分割合は兄が2/3、弟が1/3です。

この場合、兄の取り壊し費用負担額は100万円、弟の取り壊し費用負担額は50万円となります。

持分割合と費用負担割合が異なると贈与とみなされるので注意

共有名義不動産は共有者それぞれに持分があります。

原則として、持分の割合は取得するために負担した金額に応じて決まります

この原則は「取得するために負担した金額」なので、購入費用だけでなく建て替え費用も当てはまります。

そのため、建て替えのために負担した費用がそのまま持分割合になることを理解しておかなければいけません。

例えば兄弟2人で所有する共有名義不動産の建て替えに、2,000万円かかったとします。

建て替えの際に兄が負担した費用は1,000万円、弟が負担した費用も1,000万円だった場合、建て替え後の持分割合は1/2ずつになります。

では、建て替え費用の負担割合と持分割合が異なるとどうなるのでしょうか。

建て替え費用の負担割合と持分割合が異なると、その差額分は贈与とみなされてしまいます

どういうことか解説しますね。

兄弟で共有名義不動産を建て替えることになり、持ち分割合を1/2ずつにすることにしました。

ところが、建て替え費用2,000万円のうち1,500万円を兄が負担し、500万円を弟が負担しました。

すると持分割合は1/2ずつなのに、建て替え費用の負担割合は1/2ずつではなくなってしまいます。

持分割合を1/2ずつにするには、建て替え費用を1,000万円ずつ負担しなければいけませんでした。

弟が負担した費用は500万円なので、差額となる500万円が兄から弟への贈与とみなされてしまうのです。

贈与とみなされると贈与税が課税されてしまいます。

このように建て替え費用の負担割合を決める際には、「持分の割合は取得するために負担した金額に応じて決まる」という原則を忘れないようにしなければいけません。

建て替えにかかる費用の相場

建て替えにかかる費用は、建物の延床面積によって変わります

費用の相場は以下のようになります

建物の延床面積 建て替え費用の目安
90~110㎡ 1,000万円台
110~120㎡ 2,000万円台
120~130㎡ 3,000万円台

家を建てる際にはそれぞれにこだわりがありますから、おおまかな目安金額となります。

強いこだわりがなく、シンプルな家をイメージするとしても1,000万円台以上を想定しておいたほうがよいでしょう。

取り壊しにかかる費用の相場

取り壊しにかかる費用の相場は以下のようになります

建物の構造 取り壊し費用の目安
木造 4~5万円/坪
軽量鉄骨造 6~7万円/坪
RC(鉄筋コンクリート)造 6~8万円/坪

建物の構造によって坪当たりの費用が異なり、立地や建物の状況、階層によっても変わってきます。

実際に建物を見てもらい、見積もりを取って正確な金額を把握しましょう。

複数社から見積もりを取ることでそのエリアの具体的な相場を知ることもできます。

固定資産税・都市計画税が高くなる可能性を考慮する

不動産には固定資産税や都市計画税がかかりますが、人が住むための建物が建っている土地には「住宅用地特例」という減税措置が適用されています

「住宅用地特例」は「小規模住宅用地」と「一般住宅用地」の2種類があり、その内容は以下のとおりです。

区分 固定資産税課税標準 都市計画税課税標準
小規模住宅用地
200㎡以下の部分
評価額
1/6に減額
評価額
1/3に減額
一般住宅用地
200㎡を超える部分
評価額
1/3に減額
評価額
2/3に減額

例えば200㎡の住宅用地(小規模住宅用地)があり、固定資産税評価額1,800万円だったとします。

固定資産税と都市計画税は以下のように計算されます。

「固定資産税=1,800万円×1/6×1.4%」

「都市計画税=1,800万円×1/3×0.3%(都市計画税は最高で0.3%)」

では住宅用地が200㎡を超えているとどうなるのでしょうか。

例えば住宅用地が300㎡あるとしたら、200㎡までは評価額1/6に減額し、200㎡を超える部分は評価額1/3に減額して固定資産税を計算します。

このように建物が建っている土地は減税措置が適用されていますが、建物を取り壊すとこの措置が適用されなくなります。

つまり、建物を取り壊したことで固定資産税が6倍になったということが起こるのです。

これは仕方のないことなのですが、建物を取り壊すタイミングを工夫することで少しでも長く「住宅用地特例」を受けることができます。

課税額が決まる1月1日に合わせて取り壊しスケジュールを立てる

1月1日に1年間の固定資産税が決まります

年の途中で取り壊したからといって税を月割りにする考え方はないので、年度途中に固定資産税額が変わることはありません。

そのため1月1日に住宅用地であれば、その年度はそのまま住宅用地特例を受けられます。

例えば12月31日に取り壊しをする予定だったということであれば、取り壊し日を延ばし1月1日は住宅のままにしておきます。

その後1月2日に取り壊したとしても、その年度は住宅用地特例を受けた固定資産税を支払うことになるのです。

取り壊しを急ぐ理由がなく、そのタイミングを自由に決められるのであれば1月1日を待ってから取り壊しをおこなった方がよい場合もあります。

共有者全員の同意を得られない場合の対処法

ここまでは共有名義不動産の「建て替え・取り壊し」をする際に気をつけることを解説してきましたが、「建て替え・取り壊し」の話しを進めるには共有者全員の同意を得ることが前提でした。

では、共有者全員の同意を得られない場合はどうしたらよいのでしょうか。

ここからは共有者全員の同意を得られない場合の対処法を解説していきます。

共有者の持分を買取り「建て替え・取り壊し」をする

共有名義不動産は所有者が複数人いるために、「建て替え・取り壊し」するには共有者の同意が必要となります。

つまり同意を得ずに「建て替え・取り壊し」を進めるには、共有名義の不動産から単独名義の不動産にすることで解決します

単独名義にするには共有者全員の持分を買取らなければいけません。

共有者の持分をすべて買取り、自分だけの単独名義不動産にすることを「全面的価格賠償」といいます。

単独名義にすることができれば自由に「建て替え・取り壊し」をおこなうことができますが、全面的価格賠償には共有者全員の持分を買取れるだけの資金力が必要になります。

今後のトラブルを避けるため共有状態を解消する

「建て替え・取り壊し」について共有者同士で揉めた、今後も事あるごとに揉めるのは避けたいということであれば、共有状態の解消を目指しましょう。

さきほどの共有者の持分をすべて買取る方法は、「建て替え・取り壊し」をするために共有名義不動産を自分だけのものにする方法でした。

ここから解説する方法は、「揉めるくらいなら建て替えなくてよい」「共有名義不動産を手放してもよい」「何をするにも意見が揃わず話しが進まない」という方が共有状態を解消する方法です。

その方法とは以下の3つになります。

  • 現物分割する
  • 換価分割する
  • 共有者間での協議が破談した場合は裁判により分割する

3つの方法について具体的に解説していきます。

現物分割する

現物分割とは物理的に分割する方法です。

現物分割

現物分割では共有名義の土地を文筆して単独名義にする

建物が建っているなら、建物を分割することはできませんので取り壊しをおこなったあとに土地を現物分割しましょう

ひとつの土地を共有名義人の数に分けて登記することを「分筆」といいます。

分筆すると分けた土地ひとつずつに名義人が登記され、新たな地番が付けられます。

共有ではなくなるのでその土地を各々が自由に扱えます。

ただし、分筆する際には分けた土地それぞれが建物を建てるのに支障が出ないよう気をつけなければいけません。

土地の分け方によって道路に面していなかったり、分けることで土地が狭くなり過ぎたりすると、土地の面積で考える評価額よりも価値が下がってしまうからです。

道路に面していないと接道義務を満たしていないので建物を建てることができません。

土地が狭すぎても建ぺい率の問題から建物を建てることが難しくなります。

換価分割する

換価分割とは共有名義不動産を丸ごと売却し、売却で得た利益を持分割合に応じて分割する方法です。

換価分割

換価分割では共有名義の土地を1/1として売却し、現金を分け合う

共有名義不動産を丸ごと売却するこの方法は、共有者の誰のものでもなくなり第三者の手に渡ってしまいます。

思い入れのある不動産だった場合、全員の同意を得るのは難しいこともあるかもしれません。

しかし売却で得た利益を持分に応じて分割するということは、分筆のようにどのような分け方をするかで揉めることなく公平性を保つことができます

共有者間での協議が破談した場合は裁判により分割する

持分を買取ると言っても拒まれ、分筆も拒まれ、丸ごと売却することも拒まれたというように、共有者との協議が破談することがあります。

共有物分割訴訟

二者間で合意が取れないときは裁判所に仲裁してもらうことができる

こうなると八方塞がりで打つ手がないものかと悩んでしまいますが、この場合は裁判により分割することができます。

裁判所が関与してどのように分割するかを決める訴訟を「共有物分割訴訟」といいます。

<民法第249条>
共有物の分割について共有者間に協議が調わないときは、その分割を裁判所に請求することができる。前項の場合において、共有物の現物を分割することができないとき、又は分割によってその価格を著しく減少させるおそれがあるときは、裁判所は、その競売を命ずることができる。

参照:e-gov法令検索、民法第249条

共有者間で分割について協議をすると、その分割方法について意見を出し合うことができますし賛成も反対もできました。

だからこそ意見がまとまらなかったのですが、共有物分割訴訟になると民法の定めに従わなければいけません。

共有物分割訴訟では原則として現物分割になります。

建物の場合は分割ができないので、競売にかけてその代金を分割する方法や価格賠償という方法が採られたりします。

まとめ

共有名義の不動産を建て替えたり取り壊したりする際には、まずは共有者全員の同意を得なければいけません

住宅ローンが残っているなら金融機関の承諾も必要となります。

建て替えや取り壊しにかかった費用は持分に応じて決める必要もあり、話しがスムーズに進まないこともあるでしょう。

その状況を解決する方法として、共有者から全ての持分を買取ったうえで建て替えや取り壊しをする方法を解説しました。

しかし「全ての持分を買取る資金がない」「トラブルばかりだから共有状態を解消したい」と悩んでいる方もいるかもしれません。

そのような場合は、現物分割や換価分割、共有物分割訴訟についても検討してみてください

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