孤独死や自殺、事故死など、人死があった不動産は事故物件となります。
事故物件は、一般的に特殊清掃をおこないます。特殊清掃とは、遺体の体液などによる室内の汚染・損傷を除去する清掃です。
特殊清掃は、特殊な機材や薬品、そして専門的な知識が必要なため、業者に依頼する必要があります。
ただし、訳あり物件専門の買取業者に現状のまま買い取ってもらえば、特殊清掃をせずに事故物件を処分することもできます。
「急いで事故物件を処分したい」「特殊清掃業者に依頼する費用がない」というときは、現状のまま買い取ってもらうことも検討しましょう。
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- 特殊清掃とは遺体による汚染や損傷を除去する清掃。
- 特殊清掃をしなくても事故物件の売却は可能。
- 特殊清掃をせずに現状のまま売却したければ「訳あり物件専門の買取業者」に相談。
目次
事故物件を売却する前に特殊清掃は必要?
特殊清掃とは、通常のハウスクリーニングでは対応できない汚染物の除去や損傷の修復をするための清掃です。
事件・事故や孤独死の現場を清掃し、原状回復(汚染や損傷が発生する前の状態にすること)をおこないます。
ほとんどの事故物件では、特殊清掃をおこなってから売り出します。ただし、特殊清掃は法的に義務付けられているわけではありません。
特殊清掃をせず、そのままの状態で売却する方法もあります。
特殊清掃が必要なケース
そもそも、特殊清掃が必要となるのは、どのような物件なのでしょうか?
具体的には、次の3つがあげられます。
- 1.遺体の腐敗などで室内の損傷が激しいケース
- 2.対象の物件がゴミ屋敷状態のケース
- 3.火災で事故物件になったケース
上記のケースにあてはまる場合、特殊清掃を依頼するのが一般的です。
それぞれのケースについて、詳しい内容を見ていきましょう。
1.遺体の腐敗などで室内の損傷が激しいケース
孤独死などで何の処置もされずに放置された遺体は、時間が経つと腐敗していきます。
遺体が腐敗すると、体液などが染み出してきます。これらが床や壁に移ってシミになったり、悪臭の原因となるのです。
また、遺体が原因で害虫や細菌が発生する場合もあります。なるべく早く処理をしなければ、近隣に被害がおよんで損害賠償を請求されるかもしれません。
遺体の腐敗速度は、気候や室温に左右されます。夏場などは、早ければ1日程度で腐敗がはじまる場合もあります。
また、遺族にとって身内の死亡現場で清掃作業をおこなうのは精神的負担が大きいといえます。近隣の好奇の目にさらされ、嫌な思いをするかもしれません。
遺族の負担を少しでも減らすため、特殊清掃業者に相談することをおすすめします。

2.対象の物件がゴミ屋敷状態のケース
対象の物件がゴミ屋敷だった場合、家全体の清掃が必要となります。
遺体の腐敗が軽くても、溜まったゴミを処分しなければ原状回復ができません。
特殊清掃業者なら、ゴミ屋敷の整理や不用品の処分も請け負ってもらえます。
ただし、人員や作業時間も多くなり、費用も高くなってしまいます。

3.火災で事故物件になったケース
火災による事故物件は、焼け焦げやススの除去など、特殊清掃のなかでも専門的な知識と技術が必要です。
ボヤ程度の小規模な火災であっても、素人では煙による汚れや焼けた臭いを取り除くのは困難です。
ホームページなどで、火災現場の清掃対応を受け付けている特殊清掃業者を選びましょう。
また、火災現場の清掃時には、罹災証明書の発行をしておきましょう。火災現場のゴミを処分するときは基本的に有料ですが、罹災証明書があれば行政によっては割引されます。
罹災証明書は、火災保険や各自治体の支援制度の申請などにも必要となります。物件の所在地を管轄する消防署で取得できるので、早めに発行しておきましょう。

事故物件だからといって必ずしも特殊清掃が必要とは限らない
特殊清掃が必要となるケースを紹介しましたが、特殊清掃をしなければ事故物件は一切売却できないのでしょうか?
じつは、特殊清掃をおこなわなくても事故物件を売却する方法はあります。
売却時に特殊清掃をおこなうメリットとデメリットを把握し、個々の状況に合わせて適切な対処をおこないましょう。
建物自体を取り壊して更地にすれば特殊清掃は不要
建物自体を解体するのであれば、特殊清掃は不要です。
なぜなら、解体作業のなかに特殊清掃の作業も含まれるからです。体液で汚れた床材や壁紙なども、解体作業に伴って処分します。
消毒と害虫駆除、不用品の撤去だけ特殊清掃業者に依頼し、それ以外の作業を解体業者に任せるケースもあります。
ただし、解体には費用と時間がかかります。木造一軒家なら3~5万円/坪で、2週間から2ヶ月ほどかかるでしょう。
一般の一軒家なら30~40坪坪程度なので、低く見積もっても90万円程度かかると考えれられます。
特殊清掃をせず訳あり物件専門業者に「現状のまま買い取ってもらう」方法もある
物件の解体や特殊清掃への出費が難しい場合は、訳あり物件専門の買取業者に現状のまま買い取ってもらうことを検討するといいでしょう。
専門の買取業者なら、遺体による汚染や損傷が残っている事故物件でも、そのまま買取が可能です。
買取業者は、自社で事故物件を買い取った後に改めて特殊清掃の手配をします。自分は何もすることなく、早ければ数日程度で事故物件の処分ができるのです。
「身内が亡くなったショックで特殊清掃の手配に頭が回らない」「費用や時間をかけずに事故物件を手放したい」という場合は、訳あり物件専門の買取業者に相談することをおすすめします。
物件の情報を伝えるだけで買取金額を査定してもらえるので、まずは無料査定を受けてみましょう。
特殊清掃の具体的な作業内容
業者によって多少の前後はありますが、特殊清掃は基本的に下記の流れで進みます。
- 室内の消毒
- 遺品整理や不用品の処分
- 害虫の駆除
- 体液や汚物などの除去
- 消臭と除菌
- 壁紙や床材の張替え
実際に業者と契約する前に見積もりを出してもらい、具体的にどのような作業をおこなうのか確認しておきましょう。
1.室内の消毒
最初に、室内の消毒をおこないます。細菌などによる感染拡大を防ぐとともに、簡易的な消臭効果もあります。
現場の状況によって使う薬剤もさまざまですが、主に使用されるのは二酸化塩素です。適切に使用しないと、皮膚への刺激などもある強力な薬剤です。
業務用の噴霧器を使い、室内に消毒液を散布していきます。
2.遺品整理や不用品の処分
床や壁のクリーニングをおこなうために、家財道具を搬出します。
搬出された家財道具から、遺品整理で残しておくものと処分するものを選り分けます。
遺品整理は、特殊清掃業者にすべて任せるパターンもあれば、遺族立ち会いのもとおこなうパターンもあります。どのように遺品整理をするのか、事前に業者へ確認しておくとよいでしょう。
3.害虫の駆除
遺体が腐敗すると、ハエやウジなどが湧いてきます。これらの害虫は、遺体そのものを運び出しても室内で繁殖を続けます。
害虫を放置すると、近隣に移ってしまい感染症などの拡大にも繋がるので危険です。
使用する薬剤は、害虫の種類や数に合わせたものを使います。
1回の作業では完全に駆除できないこともあるので、数回に分けておこなう場合もあります。
4.体液や汚物などの除去
床や壁などに付着した遺体の体液や汚物・血液などを除去します。
ヘラやスポンジなどである程度取り除き、シミのついた床材や壁紙なども剥がします。
汚染が床下や壁の裏にまで染み渡っている場合は、部分的な解体作業も必要です。
5.消臭と除菌
オゾン発生器を使って、最終的な臭いの除去をおこないます。
オゾン自体は自然界にもある物質ですが、濃度が高くなると人体への悪影響もあるので、取り扱いには注意が必要です。
オゾン発生器の稼働と換気を交互におこない、完全に臭いがなくなるまで繰り返します。
その後、剥がした床材や壁紙を貼り直して、特殊清掃は終了です。
安心して任せられる特殊清掃業者を見極めるポイント
特殊清掃業者は全国にいくつもあるため、どこに依頼すべきかわからず不安な人もいるでしょう。
安心して任せられる特殊清掃業者を見極めるポイントは、下記の4つです。
- 解体工事業の登録がされている
- 一般廃棄物処理の許可を受けている
- 古物商許可をもっている
- 料金体系が明確でわかりやすい
それぞれのポイントを、詳しく見ていきましょう。
ポイント1.解体工事業の登録がされている
特殊清掃業を営むにあたって最低限必要なのが、解体工事業の登録です。
特殊清掃の作業では建物の一部解体が必要な場合も多いのですが、解体作業をおこなうには営業区域の都道府県知事から登録を受けることが義務付けられています。
つまり、解体工事業の登録を受けていない業者は、解体作業ができないために臭いの除去が完璧にできない恐れがあるのです。
また、登録を受けていないのに解体作業をおこなう業者は、違法業者となります。
解体工事業の登録業者は、各都道府県に直接問い合わせるか、ホームページなどで確認できます。
参照:e-Govポータル「建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律第21条」
ポイント2.一般廃棄物収集運搬の許可を受けている
家庭から出るゴミの収集・運搬は、一般廃棄物収集運搬の許可が必要です。営業をおこなう市区町村ごとに許可を取ります。
一般廃棄物収集運搬の許可を受けている特殊清掃業者なら、事故物件から出た不用品もそのまま回収してくれます。
一般廃棄物収集運搬の許可を受けていない特殊清掃業者に依頼する場合は、市町村のルールにしたがって遺族がゴミ出しをする必要があります。
また、業者によっては一般廃棄物収集運搬の許可業者と提携し、事故物件の現場まで回収に来てもらう場合もあります。
契約前に、一般廃棄物収集運搬の許可を受けているかどうかや、不用品をどのように回収・処分するのか確認しておきましょう。
市区町村のホームページを確認するか直接問い合せれば、許可を受けている業者を確認できます。
産業廃棄物収集運搬の許可では家庭ごみを回収できないので注意
一般廃棄物収集運搬の許可と似たものに、産業廃棄物収集運搬の許可があります。この許可は、事業によって排出されたゴミを収集・運搬するための許可です。
具体的には、焼却炉の残灰や飲食店の廃油、工場の金属くずなどを取り扱うために取得する許可です。
産業廃棄物収集運搬の許可があっても、特殊清掃で出るゴミの収集や運搬はできません。
特殊清掃業者のなかには、産業廃棄物収集運搬の許可を根拠に不用品の収集をおこなうところもありますが、そういった業者は違法であるため注意しましょう。
ポイント3.古物商許可をもっている
特殊清掃業者にとって必須ではありませんが、あると便利なのが古物商許可です。古物商許可をもっている業者なら、不用な遺品を買い取ってもらえます。
リユースや転売が可能なものは買い取って、それ以外の不用品は一般廃棄物収集業者に委託するという特殊清掃業者も多くいます。
古物商許可の有無は、特殊清掃業者のホームページで確認しましょう。より確実に調べたければ、業者に許可証を見せてもらう方法もあります。
ポイント4.料金体系が明確でわかりやすい
ここまでは資格の紹介が主でしたが、料金体系についてもしっかりチェックをしておきましょう。
優良な特殊清掃業者なら、事前の見積もりもわかりやすく作成し、どのような作業が必要なのか説明してもらえます。
複雑でわかりにくい見積もりであったり、作業やサービスごとに料金が設定されていない場合は、質の悪い業者かもしれません。
特殊清掃の費用相場は3万円から上は数十万円までが目安
特殊清掃の費用は業者によって料金体系が異なるため、一概にはいえません。間取りや必要な作業によっても変わります。
株式会社LIFULL seniorと一般社団法人遺品整理士認定協会が運営する「みんなの遺品整理」では、下記のように特殊清掃と遺品整理の料金目安を発表しています。
作業内容 | 作業費用 |
---|---|
床上清掃 | 3万円~ |
浴室清掃 | 3万円~ |
消臭剤・除菌剤の散布 | 1万円~ |
汚れた畳の撤去 | 1枚:3,000円~ |
オゾン脱臭 | 1日:3万円~ |
汚物撤去 | 2万円~ |
害虫駆除 | 1万円~ |
作業員の人件費 | 2万円~ |
間取り | 料金相場 | 作業人数 | 作業時間 |
---|---|---|---|
1R・1K | 3万円~8万円 | 1~2名 | 1~3時間 |
1DK | 5万円~12万円 | 2~3名 | 2~4時間 |
1LDK | 7万円~20万円 | 2~4名 | 2~6時間 |
2DK | 9万円~25万円 | 2~5名 | 2~6時間 |
2LDK | 12万円~30万円 | 3~6名 | 3~8時間 |
3DK | 15万円~40万円 | 3~7名 | 4~10時間 |
3LDK | 17万円~50万円 | 4~8名 | 5~12時間 |
4LDK以上 | 22万円~60万円 | 4~10名 | 6~15時間 |
例えば、上記の表をもとに「1Rの事故物件で、浴室清掃以外の全作業と遺品整理を依頼した場合」の費用を計算すると、最低でも15万3,000円かかります。
遺体の腐敗や室内の汚染・損傷が激しければ、100万円を超えるケースもあります。
特殊清掃は、遺体の腐敗が進んで汚染が悪化しないうちに依頼したほうがよいといえるでしょう。
特殊清掃の具体的な事例
最後に、どのような事例で、どんな内容の特殊清掃をおこなうのか見ていきましょう。
特殊清掃の具体的な事例として、下記の2つを紹介します。
- 遺体の体液が染み出していた孤独死物件の特殊清掃
- 浴室で亡くなっていた事故物件での特殊清掃
1.遺体の体液が染み出していた孤独死物件の特殊清掃
孤独死で発見が遅れ、遺体が腐敗しているケースは多くあります。遺体が腐敗すると体液が染み出すのは、すでに解説したとおりです。
体液は床を伝い、その下にあるコンクリート部分にまで達することがあります。
コンクリートを削ると建物の強度が下がってしまうので、洗浄後にコーティングをおこない臭いを封じ込める手法が一般的です。
遺品に関しては、あらかじめ遺族に必要なものや探してほしいものを確認し、業者側で分別して引き渡すことが多くなります。
2.浴室で亡くなっていた事故物件での特殊清掃
気温と風呂の温度差で血圧が上下し、心筋梗塞や脳梗塞を発症して死亡する「ヒートショック現象」というものがあります。
浴槽内で死亡すると、体液や皮脂・皮膚が水に溶け出し、そのまま流すこともできません。そのまま流すと、水道管が詰まってしまいます。
浴槽に溶け出している体液や皮脂・皮膚を取り除き、特殊な薬品で汚れを浮かす必要があります。
まとめ
事故物件は、売却前に特殊清掃をおこなうのが一般的です。
遺族が自分で清掃をおこなうのは、技術的にも精神的にも難しいでしょう。
しかし、事故物件をすぐに売却したいのであれば、訳あり物件専門の買取業者に依頼する方法もあります。
訳あり物件専門の買い取り業者なら、特殊清掃をしていない状態であっても、そのまま事故物件を買い取ってくれます。
事故物件と特殊清掃についてよくある質問
特殊清掃とは、通常のハウスクリーニングでは対応できない汚染物の除去や損傷の修復をするための清掃です。事件・事故や孤独死の現場を清掃し、原状回復(汚染や損傷が発生する前の状態にすること)をおこないます。
室内の消毒や害虫駆除をおこなってから体液や汚物を除去し、消臭をして物件を居住可能な状態にします。遺品整理もあわせておこない、遺族の意向を聞いて不用品の買取・回収をする場合もあります。
建物自体を取り壊して更地にする予定なら、特殊清掃は不要になる場合があります。また、訳あり物件専門の買取業者に依頼すれば、特殊清掃をおこなわない現状の買い取ってもらえます。→【高額査定】訳あり物件専門の買取業者はこちら
業者や現場の状況次第で金額に幅があります。低くても3万円、場合によっては100万円を超える可能性もあります。
解体工事業の登録の有無は確認しておきましょう。他には、一般廃棄物収集運搬の許可を受けていたり、古物商許可をもっていたりする業者はおすすめです。また、料金体系が明確で見積もりがわかりやすい業者を選ぶとよいでしょう。
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